内部統制の開示すべき重要な不備とは?判断基準や検出されたときの対応を解説
監修:株式会社WARC 公認会計士チーム
投稿日:2026.08.06
更新日:2026.09.11
内部統制において「開示すべき重要な不備」とは、財務報告に重要な影響を及ぼす可能性が高い財務報告に係る内部統制の不備のことをいいます。
本記事の要点は次の3点です。
- 開示すべき重要な不備は、内部統制の不備のうち、財務報告に重要な影響を及ぼす可能性が高いものを指す
- 該当するかどうかは、金額的重要性と質的重要性の双方から検討し、いずれかの観点で重要と判断されれば該当する
- 不備の可能性を見つけたときは「確認 → 原因究明 → 是正・再評価 → 開示すべき重要な不備かの判定」の4ステップで対応する
内部統制の整備及び運用における不備についての理解が乏しいことで、不適切な財務報告が行われ、ステークホルダーの利害に大きな影響を及ぼし、最悪の場合、刑事事件に発展する可能性もあります。
本記事では、具体的な不備の解説に加えて不備を見つけたときの適切な対処法を解説しています。本記事を読むことで、会社のリスクを最小限に抑え、透明性を確保するための手段を理解できるでしょう。


内部統制の不備の種類
内部統制における不備には、「整備状況の不備」と「運用状況の不備」の2種類があります。本章では、これら2つの不備に注目して解説します。
なお、この2区分は内部統制の不備全般の分類です。開示すべき重要な不備は、これらの不備のうち、一定の金額を上回る虚偽記載または質的に重要な虚偽記載をもたらす可能性が高いものを指します(企業会計審議会「財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準」Ⅱ.1.②)。
整備状況の不備
整備状況の不備とは、リスクに対応する必要な内部統制が存在しない、あるいは内部統制が存在するものの不十分である、というものです。
例えば、外注先への支払プロセスにおける整備状況の不備を考えてみましょう。一般的に担当者が請求書をもとに支払データを作成し、その支払データを上長が確認してから支払処理を実行するという流れになり、金額入力ミスや請求書の処理漏れのリスクに対し上長の確認が内部統制となります。
しかし、上長の確認がない場合や、担当者による自己確認となっている場合は、これらのリスクに対する内部統制が存在しない、または不十分であるため、整備状況の不備となります。
運用状況の不備
運用状況の不備とは、整備段階で意図したように内部統制が運用されていない、又は運用上の誤りが多い、あるいは内部統制を実施する者が統制内容や目的を正しく理解していない等の不備です。
例えば、さきほどの例と同じ外注先への支払プロセスの場合を考えてみましょう。上長が確認する前に担当者が支払処理を実行している、上長の確認で誤りが発見されることは少ないが誤りが頻発しているなど、運用状況の不備に該当する状態が考えられます。
内部統制評価の流れ
内部統制の評価は、全社的な内部統制の評価から始まり、その結果を踏まえて業務プロセスの評価へと進みます。ここでは、不備が検出される場面として代表的な、業務プロセスに係る評価の流れを説明します。
業務プロセスに係る内部統制の評価は、以下3つの手順で行います。
- 評価範囲を選定する
- 整備状況を評価する
- 運用状況を評価する
では、それぞれの手順を詳しくみていきましょう。
1.評価範囲を選定する
業務プロセスの評価範囲は、まず重要な事業拠点を選定し、その重要な事業拠点から評価対象とする業務プロセスを識別します。
具体的には、重要な事業拠点は、売上高などを用いて金額の高い拠点から合算し、全体の一定割合(例えば、概ね3分の2程度)に達するまでの拠点を選定していきます。
その後、重要な事業拠点における、企業の事業目的に大きく関わる勘定科目(一般的な事業会社の場合、原則として、売上、売掛金、棚卸資産)に関わる業務プロセスは、原則として全て評価対象とし、その他、個別に重要と判断されたものも評価対象として選定します。
ただし、2023年4月改訂の基準・実施基準(2024年4月1日以後開始する事業年度から適用)では、「売上高等のおおむね3分の2」や「売上、売掛金及び棚卸資産の3勘定」といった例示を機械的に適用すべきでないことが明記されました。あわせて、これらの例示については、基準・実施基準における段階的な削除を含む取扱いが今後検討されるとされています(企業会計審議会「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに実施基準の改訂について(意見書)」令和5年4月7日)。上記の比率はあくまで目安であり、自社の事業内容やリスクを踏まえ、必要に応じて監査人と協議のうえ判断する必要があります。
個別に重要と判断されるケースとして、リスクの高い非定型取引や予測・見積もりが伴う業務プロセスなどが挙げられます。
以上により、内部統制評価の手続は、リスクアプローチ(リスクの大きさを勘案して評価範囲を決定していく手法)に基づいて実施されます。
内部統制の評価範囲については、次の記事を参考にしてください。
内部統制の評価範囲とは?決め方と2024年改訂のポイント
2.整備状況を評価する
整備状況の評価とは、内部統制が規程や方針に従って運用された場合に、財務報告の重要な事項に虚偽記載が発生するリスクを十分に低減できるものとなっているかを評価することです。
整備状況の評価では、業務全体の流れを把握し、それを文書や図に書き起こし、想定されるリスクに対応した内部統制が存在するかをチェックします。
業務全体の流れを把握するには、ウォークスルーと呼ばれる手続を実施することが一般的です。
ウォークスルーとは、整備状況の評価を行う手法の1つで、1つの取引の開始から終わりまでを追跡して流れを把握する手続です。追跡するにあたって、資料間の数字の整合を確認したり、どのように資料が作成されているかをヒアリングしたりすることで業務全体の流れを把握していきます。
ウォークスルーについて、次の記事を参考にしてください。
内部統制のウォークスルーとは?進め方・評価の手順と注意点をわかりやすく解説
3.運用状況を評価する
整備状況の評価後は、運用状況を評価します。これは、整備状況で確認した内部統制が適切に運用されているかを確認する作業です。運用状況の評価には、原則としてサンプルテストを使用します。
例えば、外注先への支払に対する上長承認の内部統制であれば、請求書の綴りから無作為にサンプルを抽出し、支払処理時の上長承認を確かめることが考えられます。このサンプルテストを通じて、内部統制が適切に運用されているかを評価します。
運用状況の評価で必要となるサンプル数の考え方については、次の記事を参考にしてください。
内部統制評価で必要なサンプル数はどれくらい?一覧表を使って解説!
内部統制で不備が検出されたときはどう対応する?
業務プロセスに係る内部統制で不備が見つかった場合、一般的に以下4つの手順を実施します。
- 不備かどうかを確認する
- 不備の原因を究明する
- 是正活動を実施して再評価する
- 開示すべき重要な不備かどうかを判定する
1.不備かどうかを確認する
例えば、販売プロセスに係る内部統制の運用状況を評価した際に、本来承認作業があるべき売上について、未承認となっていたことを発見した場合は、不備かどうかの事実確認を行うために、内部統制の実施者や関連する従業員にヒアリングを実施する必要があります。場合によっては、例外処理であったり、補完統制で補われていたりするケースがあるためです。
また、財務報告の誤りや不正行為が発生した場合なども、関連する内部統制に不備がなかったかを確認します。
2.不備の原因を究明する
不備と判断された場合は、適切な役職者に報告するとともに、内部統制の実施者などへの詳細なヒアリングにより原因を究明します。
ただし、原因究明の結果、「部長の不注意であった」といったような報告だけで終えるのではなく、部長の承認に充てられる時間の不足や課長の承認で足りる可能性なども検討し直すことが重要です。
つまり、改善策を講じる上では、単に「承認者が今後は注意する」ということではなく、仕組みとしてどう解決していくかが、ポイントになります。
3.是正活動を実施して再評価する
原因究明後は、是正活動を実施してから再評価を行います。
是正後、しばらく内部統制を運用し、その運用された内部統制に関して評価を実施して不備が是正されたかをチェックします。
仮に不備が是正されていない場合、再度是正活動を行って、一定の運用期間を経て再評価を繰り返します。
なお、開示すべき重要な不備が発見された場合であっても、内部統制報告書における評価時点(期末日)までに是正されていれば、財務報告に係る内部統制は有効であると認めることができるとされています(基準Ⅱ.3.(5))。是正の完了時期が期末日を越えるかどうかが、報告内容を左右します。
4.開示すべき重要な不備かどうかを判定する
期末時点で不備が是正できていない場合でも、直ちに開示すべき重要な不備になるとは限りません。開示すべき重要な不備は、その不備が財務報告に与える金額的重要性と質的重要性を勘案して、決定されます。
また、複数の不備が組み合わさって、開示すべき重要な不備となる場合もあるので、同じ勘定科目に関係する不備を全て合わせて、当該不備のもたらす影響が財務報告の重要な事項の虚偽記載に該当する可能性があるか否かによって判断することが必要です。
さらに、集計した不備の影響が勘定科目ごとに見れば財務諸表レベルの重要な虚偽記載に該当しない場合でも、複数の勘定科目に係る影響を合わせると重要な虚偽記載に該当する場合も開示すべき重要な不備となります。
不備が開示すべき重要な不備と判定されるまでのフロー
ここまでの流れを、判定のステップとして整理すると次のようになります。
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STEP1
不備の識別
内部統制評価や財務報告の誤り等から不備の可能性を識別する
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STEP2
事実確認
実施者や関連部署へのヒアリングにより、例外処理や補完統制の有無を確認し、不備かどうかを判断する
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STEP3
原因究明と是正
仕組みとしての改善策を講じ、一定期間運用したうえで再評価する
-
STEP4
期末日時点の状況を確認
期末日までに是正されていれば、内部統制は有効と認めることができる
-
STEP5
重要性の判定
未是正の不備について、金額的重要性・質的重要性の双方から検討し、いずれかの観点で重要と判断されれば該当する
-
STEP6
開示
開示すべき重要な不備に該当する場合、内部統制報告書に、内部統制が有効でない旨と、当該不備の内容およびそれが是正されない理由を記載する(基準Ⅱ.4.(5)③)
評価範囲外で開示すべき重要な不備が見つかった場合
2023年4月改訂の実施基準では、評価範囲外の事業拠点または業務プロセスにおいて開示すべき重要な不備が識別された場合、当該事業拠点又は業務プロセスについて、少なくとも当該不備が識別された時点を含む会計期間の評価範囲に含めることが適切であると明確化されました(企業会計審議会「財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準」Ⅱ.2.(2))。
開示すべき重要な不備の2つの判断基準

内部統制の開示すべき重要な不備の判断基準には、「金額的重要性」と「質的重要性」の2つの要素があります。
開示すべき重要な不備に該当するかどうかは、金額的重要性と質的重要性の双方から検討し、いずれかの観点で重要と判断されれば該当します。
金額的重要性の判断基準
金額的重要性の判断基準は、発生した不備がどの程度金額的影響を及ぼすかによって判断します。具体的には、連結総資産・連結売上高・連結税引前利益などに対する比率で判断します。
これらの指標は評価対象年度の実績値のみならず、それぞれの過去の一定期間における実績値の平均を含みますので、評価対象年度と過去3期間などを平均することが一般的です。
比率の例としては、連結税引前利益の場合5%程度が挙げられます。
ただし、この5%という水準はあくまで例示であり、画一的に適用するものではありません。会社の業種・規模・特性などに応じて適切に用いる必要があり、最終的には財務諸表監査における金額的重要性との関連にも留意が求められます。また、例年と比較して連結税引前利益が著しく小さくなった場合や負となった場合には、必要に応じて監査人と協議のうえ、比率を修正する、指標を変更する、特殊要因を除外するといった対応を行うことがあります(実施基準Ⅱ.1.②ロa)。
質的重要性の判断基準
質的重要性の判断基準は、投資家の意思決定にどの程度影響を及ぼすか、により判断します。
実施基準では、上場廃止基準や財務制限条項に関わる記載事項などが投資判断に与える影響の程度、関連当事者との取引や大株主の状況に関する記載事項などが財務報告の信頼性に与える影響の程度で判断するとされています(実施基準Ⅱ.1.②ロb)。
内部統制の開示すべき重要な不備の事例
本章では、内部統制の「開示すべき重要な不備」に該当する実例をご紹介します。
内部統制の不備の一覧表は、次の記事を参考にしてください。
内部統制の不備一覧表の役割や記載項目は?開示すべき重要な不備とあわせて解説
不適切な会計処理の報告事例
A社では、Webサイトの書き込みにより、過去の取引における不適切な会計処理の可能性が発覚しました。その後、速やかに第三者委員会を設置して調査にあたりました。
調査の結果、複数の不適切な会計処理が確認され、同社は開示すべき重要な不備であると判断し、内部統制は有効でないと訂正内部統制報告書で報告しています。
あわせて、再発防止策として「コーポレートガバナンス見直し」や「売上重視の経営方針見直し」、「経営監視委員会の設置」、「経理管理部門の強化」などを実施すると報告しました。
より多くの不備の事例と、その傾向については次の記事で解説しています。
内部統制の不備の事例とは?開示すべき重要な不備の判断基準も解説
また、開示すべき重要な不備がある場合の監査人の意見や、内部統制監査報告書の記載内容については次の記事をご覧ください。
内部統制監査報告書とは?記載内容と文例・注意点をわかりやすく解説
まとめ
内部統制の開示すべき重要な不備についての理解は深められたでしょうか。
本記事では、内部統制の基本知識だけでなく、開示すべき重要な不備の判断基準や具体的な事例、発覚時の対応方法について紹介してきました。
内部統制の不備が明らかになった場合は、的確かつ効果的な対応プロセスにより是正活動を行います。具体的には、不備かどうかの確認から原因究明、是正活動と再評価、そして開示すべき重要な不備の判定という手順で対応することになります。
これらの手順は会社が迅速に問題を解決し、透明性を確保するための重要なガイドとなります。内部統制の不備を見つけたときの対処法として参考にしてください。
よくある質問
内部統制の不備と、開示すべき重要な不備は何が違いますか?
内部統制の不備は、整備状況の不備と運用状況の不備の総称です。このうち、財務報告に重要な影響を及ぼす可能性が高いもの、具体的には一定の金額を上回る虚偽記載または質的に重要な虚偽記載をもたらす可能性が高いものが「開示すべき重要な不備」に該当します。不備がすべて開示すべき重要な不備になるわけではありません。
開示すべき重要な不備に金額基準はありますか?
実施基準では、連結総資産、連結売上高、連結税引前利益などに対する比率で判断するとされています。比率については、連結税引前利益のおおむね5%程度という例示が示されています。ただしこれは画一的に適用するものではなく、会社の業種・規模・特性に応じて適切に判断する必要があります。金額基準を満たさない場合でも、質的重要性から開示すべき重要な不備と判断されることがあります。
開示すべき重要な不備が見つかると、どうなりますか?
期末日時点で開示すべき重要な不備が存在する場合、内部統制報告書に、財務報告に係る内部統制が有効でない旨と、当該不備の内容およびそれが是正されない理由を記載することになります。
期末までに是正できれば、内部統制は有効と評価できますか?
開示すべき重要な不備が発見された場合でも、内部統制報告書における評価時点(期末日)までに是正されていれば、財務報告に係る内部統制は有効であると認めることができるとされています。なお、期末日後に実施した是正措置については、内部統制報告書に付記事項として記載できます。
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本記事は、株式会社WARCに所属する公認会計士が内容を監修しています。 (最終監修:2026年9月)


