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内部統制の文書化とは?業務記述書・フローチャートの書き方と進め方を解説

監修:株式会社WARC 公認会計士チーム

投稿日:2026.08.06

更新日:2026.09.11

内部統制の文書化とは?業務記述書・フローチャートの書き方と進め方を解説

内部統制の文書化とは、内部統制の整備・運用の状況や、その評価の手続と結果を、後から第三者が検証できる形で記録し保存することです。財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準では、記録の範囲・形式・方法は一律に規定されていませんが、評価の手続と結果、発見した不備とその是正措置については、経営者が記録し保存することが求められています。

内部統制に関する文書は、経営者が自社の内部統制を評価する際の基礎資料になるだけでなく、監査人が監査証拠として利用することもあります。つまり、社内の記録であると同時に、外部に説明するための資料でもあります。

本記事では、文書化と3点セットの関係、記録が求められる範囲、文書化が必要な理由と文書が重要となる場面、業務記述書とフローチャートの書き方、文書管理の進め方までを解説します。

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内部統制の文書化と3点セットの関係

内部統制の文書化の中心となるのが、業務プロセスごとに作成する「内部統制の3点セット」です。3点セットとは、業務の流れを文章で記述した業務記述書、それを図で表したフローチャート、リスクと統制の対応関係を一覧化したリスクコントロールマトリクス(RCM)の3つを指します。作成自体は義務ではありませんが、実務において、上場企業・IPO準備企業に広く定着した標準的な文書形式となっています。

3点セット全体の位置づけや作成手順(業務プロセスの理解から評価範囲の決定、RCMの作成まで)、Excelで作成する場合の進め方は、関連記事で詳しく解説しています。本記事では、このうち文書化の実務で最も手が止まりやすい業務記述書とフローチャートの書き方に絞って解説します。

内部統制に関する文書の作成や保存は義務?

業務記述書・フローチャート・RCM(3点セット)の作成は、義務ではありません。ただし、評価の手続と結果、発見した不備と是正措置については記録し保存することが求められています。一方で、その記録の形式・方法は一律に規定されておらず、既存の社内資料を利用し、必要に応じて補足する形でも足りるとされています。

内部統制に関する文書の作成や保存に関して、財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準では、以下のように記載されています。

経営者は、財務報告に係る内部統制の有効性の評価手続及びその評価結果、並びに発見した不備及びその是正措置に関して、記録し保存しなければならない。

①  内部統制の記録 
内部統制に係る記録の範囲、形式及び方法は一律に規定できないが、例えば、以下のような事項を記録し保存することが考えられる。

イ.財務報告に係る内部統制の整備及び運用の方針及び手続

ロ.全社的な内部統制の評価にあたって、経営者が採用する評価項目ごとの整備及び運用の状況

ハ.重要な勘定科目や開示項目に関連する業務プロセスの概要(各業務プロセスにおけるシステムに関する流れやITに関する業務処理統制の概要、使用されているシステムの一覧などを含む。) 

ニ.各業務プロセスにおいて重要な虚偽記載が発生するリスクとそれを低減する内部統制の内容(実在性、網羅性、権利と義務の帰属、評価の妥当性、期間配分の適切性、表示の妥当性との関係を含む。また、ITを利用した内部統制の内容を含む。) 

ホ.上記二.に係る内部統制の整備及び運用の状況 

ヘ.財務報告に係る内部統制の有効性の評価手続及びその評価結果並びに発見した不備及びその是正措置

▪ 評価計画に関する記録

▪ 評価範囲の決定に関する記録(評価の範囲に関する決定方法及び根拠等を含む。)

▪ 実施した内部統制の評価の手順及び評価結果、是正措置等に係る記録

なお、記録の形式、方法等については、一律に規定されるものではなく、企業の作成・使用している記録等を適宜、利用し、必要に応じそれに補足を行っていくことで足りることに留意する。

特に、事業規模が小規模で、比較的簡素な構造を有している組織等においては、様々な記録の形式・方法をとりうる。例えば、当該会社の経営者からの社内への通達等、当該会社の作成している経営者から組織の内外の者に対する質問書、各業務の業務内容を前任者から後任者に伝達するための文書等、販売担当者が受注の際に作成した文書等、ソフトウェアのマニュアル、伝票や領収書などの原資料、受注入力後販売管理システムから出力される出荷指図書などの業務指示書等を適宜、利用し、必要に応じてそれに補足を行っていくことで足りることに留意する。

引用:財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準(金融庁)

文書以外では、例えば、評価スケジュールはタイムラインの図として、評価範囲の決定根拠はExcelの数式として記録することも考えられます。

また、内部統制の整備状況や運用状況の評価において、原資料のコピーをチェックした場合、そのチェックマークを原資料のコピーに記載することで、記録として保存することもあります。

以上のように、必ずしも全てを文書にして残す必要はありませんが、客観的な第三者に対してどのように内部統制を評価したかを説明できるレベルでの記録と保存が求められます。

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内部統制の文書化はなぜ必要?

内部統制とは、企業が財務報告の信頼性を確保し、業務の効率化を図るためのプロセスです。この内部統制を運用し、有効性を評価する上で、文書化は不可欠な要素になります。

業務の標準化と一貫性の確保のため

文書化された規程や手順、3点セットは、新入社員や異動者が業務に取り組む際のガイドラインとして機能し、一貫性のある業務遂行を支援します。

リスク低減確認のため

業務記述書やフローチャートで内部統制の具体的な実施方法や実施者を明確にすることで、その内部統制がリスクを十分に低減できるものとなっているかを確認できます。

客観的に判断するため

経営者は、有効な内部統制を構築し、その有効性を評価することに責任を負っています。業務記述書・フローチャート・RCMの3点セットは、この評価を行う上での基礎資料となり、経営者が内部統制の強化点や改善点を見極めるのに役立ちます。

客観的な判断は、内部統制が組織全体に浸透し、適切に機能しているかどうかを確認する上で不可欠です。

いつでも提示できるようにしておくため

3点セットをはじめとする内部統制に関する文書は、外部監査人への報告資料として利用されます。これにより、企業は監査人に対して自社で行った内部統制の評価のやり方を示すことが可能です。

特に、金融商品取引法や会社法などの規制下で事業を行う企業にとっては、文書化された内部統制の記録が重要な証拠となります。これらの文書は、法令違反や不正行為が発生した場合の調査や是正措置の基礎となることや、組織が適切にリスクを管理し、運用していることを証明する重要な資料となることがあります。

内部統制の文書が重要となる場面

業務記述書・フローチャートをはじめとする内部統制に関する文書が特に重要となる場面には、内部監査の実施、及び内部統制監査の実施などがあります。以下では、それぞれの場面でこれらの文書がどのように使われるかを解説していきます。

内部監査で利用するケース

内部監査の過程では、内部統制に関する文書が中核的な役割を果たします。内部監査人は、規程やマニュアル、業務記述書・フローチャートといった文書を基に、組織の内部統制の有効性を評価します。これらの文書は、監査活動の計画段階でも、重要な情報源となり、特定のリスク領域やコントロールの弱点を特定するのに役立ちます。

また、内部監査人は、内部統制の運用状況を評価し、不備の判定をするためにこれらの文書を使用します。監査結果の報告や是正措置の提案においても、文書化された証拠は重要な根拠となるでしょう。内部統制に関する文書は、組織のコンプライアンス状況を客観的に示し、改善のための行動計画を策定する基礎となります。

内部統制監査で利用するケース

監査人は、3点セットをはじめとする内部統制に関する文書をもとに、実際の業務プロセスがどのように実施されているかを把握します。内部統制に関する文書は、監査人が組織のリスク管理とコントロールの枠組みを全体的に理解し、適切な評価を行うための基盤を提供します。これらは内部統制監査で不可欠な要素です。

内部監査…組織内部で行う監査。

内部統制監査…会計士・監査法人が行う監査。

内部統制の監査については、次の記事を参考にしてください。

内部統制と内部監査の違いは?両者の実施目的や内容・流れを解説

業務記述書の書き方

業務記述書とは、業務プロセスの内容や手順を文章で記述した文書です。目的は、取引の流れ・会計処理の過程と、そこに組み込まれた統制を、社内の関係者と監査人が同じ理解に立てる状態にすることにあります。

記載にあたっては、次の項目を漏れなく押さえます。

記載項目記載する内容
いつ取引や業務が発生・実施されるタイミングと頻度
どこで実施される部門・拠点
誰が実施者と承認者
何を対象となる取引やデータ
どのように使用するシステムや帳票と、承認・照合などの手続
なぜその手続を実施する理由
関連する統制各ステップに組み込まれている内部統制の内容

記述の粒度は、詳しく書けばよいというものではありません。ヒアリングで得た情報を全て反映すると情報量が過大になり、不要な情報が混在して更新の負荷も上がります。第三者が取引の流れ・会計処理の過程と関連する統制を追える水準を目安に、必要に応じて原資料を確認しながら事実を裏付けていくことが重要です。

フローチャートの書き方

フローチャートは、業務記述書に記述した業務プロセスの内容や手順を図で表した文書です。目的は、取引とデータの流れ、そして承認や照合といった統制が入るポイントを、一目で追える状態にすることです。

作成時に押さえるポイントは次の4点です。

  • 業務プロセスのステップ、意思決定(承認・判断)のポイントを明示する
  • 関連する部門や担当者を列(レーン)に分ける
  • 使用するシステムと帳票、データの流れを図の中に示す
  • 業務記述書に記述した内容とずれが生じないようにする

なお、フローチャートで使用する記号や記載ルールは一律に定められているものではありません。そのため、自社で統一したルールを決め、作成者が変わっても同じ粒度で書ける状態にしておくことが実務上のポイントになります。

業務記述書とフローチャートの作成の流れ

業務記述書とフローチャートの作成は、企業の内部統制の整備・運用状況を評価するための重要なステップです。

3点セットの作成は、業務プロセスの理解、業務記述書とフローチャートのドラフト作成、リスクとコントロールの整理という流れで進めます。

業務記述書とフローチャートのドラフト作成

業務記述書は、企業の各業務プロセスの詳細を文書化し、業務の開始から終了までの各ステップ、関連する責任者、必要な文書やシステム、及びその業務に関連するコントロールを明記します。これは、企業内の業務の理解を深めるために不可欠です。

フローチャートは、業務プロセスの流れを視覚的に表現し、プロセスの各ステージでの意思決定のポイントや関連する部署を明確に示します。フローチャートの作成は、業務プロセスをより簡潔かつ直感的に理解するのに役立ちます。ドラフト作成段階では、プロセスの流れを可能な限り正確に記載し、関連部門からのフィードバックを取り入れて、洗練させることが重要です。

業務記述書とフローチャートが固まったら、そこで洗い出したリスクと、それに対応する統制をリスクコントロールマトリクス(RCM)に一覧化します。RCMの作成手順とキーコントロールの特定方法は、3点セットの関連記事で解説しています。

内部統制における文書管理方法

内部統制評価の効果的な実施には、作成した3点セットや評価の記録を含めた文書管理が重要です。適切な文書管理システムを構築することで、企業は効率的かつ効果的に内部統制を評価できます。文書管理には、文書のファイリング、及び文書管理システムの導入などが挙げられます。

文書を区分ごとにファイリングする

文書の区分ごとのファイリングは、文書管理の効率化と秩序を保つために重要です。文書は種類別、部門別、プロジェクト別など、論理的なカテゴリに分類し、体系的に整理します。これにより、必要な文書を迅速に特定し、アクセスが容易になります。

文書のファイリングシステムは、利用者が直感的に文書を検索できるように設計されるべきです。また、文書のバージョン管理や変更履歴の追跡も重要な要素です。文書が更新された場合、古いバージョンとの差異が明確になるようにし、誤った情報に基づいて意思決定が行われないようにすることが重要です。

文書管理システムを取り入れる

現代の企業環境においては、効率的な文書管理のために専門の文書管理システムを導入する企業が増えています。文書管理システムは、デジタル化された文書の保存、検索、共有を容易にするものです。これにより、物理的なファイリングスペースの削減、文書への迅速なアクセス、リモートアクセスの提供といったさまざまな利点が得られるでしょう。

文書管理システムには、以下のような機能が備わっているものがよいでしょう。

・セキュリティ機能(アクセスコントロールなども含む)

・バックアップ機能

これにより、文書のセキュリティが保たれ、災害やシステム障害時のデータ損失リスクが軽減されます。

なお、内部統制の文書化に特化したツールであれば、業務記述書・フローチャート・RCMの整合性の管理や、更新履歴の記録を仕組みとして持たせることができます。内部統制とシステムの関係については、関連記事も参考にしてください。

文書管理の運用方法は、内部統制を客観的に評価するだけでなく、組織の効率性と透明性の向上にも寄与します。適切に実施された文書管理は、内部統制の信頼性を高め、監査や法規制への対応を効果的にサポートします。

内部統制の文書化のポイント

内部統制における文書化は、企業が適切な内部統制を実施していることを示す証拠として機能し、監査の際に重要な役割を果たすものです。内部統制における文書化において留意すべきポイントは以下の通りです。

1. 明確さと正確さ

業務記述書などの文書は、明確かつ正確に記述する必要があります。これには、どこで、誰が、いつ、どのように、何をするのか、なぜ実施するのか、の詳細が含まれます。明確さと正確さは、内部統制を正しく理解及び評価するために不可欠です。

2. アクセスと更新の容易さ

内部統制に関する文書は、関連する内部統制評価担当者や監査人にとってアクセスしやすく、必要に応じて簡単に更新できる形式であることが望ましいです。

3. 整合性と一貫性

文書化は、文書同士及び文書内で整合性と一貫性を保つことを目指すべきです。特に、業務記述書とフローチャートの間で内容にずれが生じないように管理することが重要です。これにより、企業全体で統一された文書が出来上がり、どこにどのような情報が記載されているかがわかりやすくなります。

4. 継続的な見直しと改善

内部統制の文書化は一度限りの作業ではありません。企業の業務プロセスやシステムの変化に応じて、文書は定期的に見直され、必要に応じて更新する必要があります。

内部統制における文書化は、評価や監査の基盤を提供します。これらのポイントに留意し、効果的に文書化することで、適切な内部統制の評価を実施できます。

内部統制の文書化に関するよくある質問

内部統制の文書化はどこまで必要ですか?

記録の範囲・形式・方法は一律に定められていません。財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準では、評価の手続と結果、発見した不備とその是正措置などを記録し保存することが挙げられており、既存の社内資料を利用して必要に応じて補足する形でも足りるとされています。客観的な第三者に対して評価の過程を説明できる水準が目安になります。

業務記述書とフローチャートは両方作成する必要がありますか?

両方の作成が義務付けられているわけではありません。ただし、業務記述書は業務の流れを文章で押さえるもの、フローチャートは全体像とデータの流れを可視化するものという役割の違いがあります。そのため実務では両方を作成し、内容が整合するように管理するのが一般的です。

文書化した内容はいつ見直せばよいですか?

組織変更やシステム変更、取引形態の見直しなどで業務プロセスが変わったときが見直しのタイミングです。実態と乖離した文書では内部統制の評価を正しく行えず、監査人からの指摘につながることがあります。

業務記述書には何を書けばよいですか?

いつ・どこで・誰が・何を・どのように・なぜ実施するのかを押さえ、取引の流れ・会計処理の過程と関連する統制を記載します。詳細は本記事の「業務記述書の書き方」で解説しています。

まとめ

内部統制の文書化は、内部統制の整備・運用の状況と評価の手続と結果を、第三者が検証できる形で残す作業です。記録の形式は一律に定められていませんが、業務記述書とフローチャートで業務の流れと統制の位置を可視化し、その内容を実態に合わせて更新し続けることが、評価と監査の土台になります。

文書化を形式的な作業で終わらせず、評価に使える状態を保つことが重要です。

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本記事は、株式会社WARCに所属する公認会計士が内容を監修しています。 (最終監修:2026年8月)

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